【King Gnu/あなたは蜃気楼】の歌詞の意味を徹底解釈 | すぐに消えてしまう音楽を追いかける苦悩がエモすぎる!
編集: ひいらぎ最終更新: 2020/9/19
あなたは蜃気楼という曲名の意味を考察
「蜃気楼」の意味は、空気の流れによって光が屈折し、実際にはないものがあるように錯覚してしまうことです。砂漠であたかもオアシスがあるように見えたりすることから、期待させては裏切るものの象徴として語られることもあります。
蜃気楼はつかもうとすると目の前で消えてしまい、向こうに見えているのにいつまでも辿り着けないという性質を持つことから、本曲においては「正解のない音楽という存在」の比喩であるように感じることが出来ます。
そしてそんな蜃気楼の様であり、すぐに消えてしまう「あなた=音楽」を追いかけようとすることに対する苦悩を歌っているのではないかと考えることが出来ます。
あなたは蜃気楼の歌詞の意味を徹底解釈
1番
ひらりと翻したの 風の吹くまま
思惑 するり逃れて ニヒルに駆ける
キラリとこぼれ落ちた 涙と思い出を
さっと拭って見せて
あなたが蜃気楼に見えたの
あなたが蜃気楼に見えたの
あなたは蜃気楼 無邪気に笑ってみせて
あなたは蜃気楼 僕を振り回して
あなたは蜃気楼 無邪気に笑ってみせて
あなたは蜃気楼 僕を振り回して
まるで蜃気楼のように実体がなく、なかなかつかみ取ることが出来ない。
それはまるで風の様に、こちらの思惑などはお構いなしにニヒルな笑みを浮かべながらどこかへ去ってしまう。
そうしてつかみ取れなかったものをいつまでも悔やんでいないで、それは良き経験として受け取り、涙を拭ってまた模索し始める。
それでもやはり蜃気楼はこちらに笑いかけてくれるので、近づこうとする度に振り回されてしまう。しかしそうして振り回されている自分というものも心地よく、何度も繰り返してしまう。
果たして蜃気楼の正体とは何でしょうか。
それはKing Gnuの当時の状況から察するに、並ならぬ決意が込められた漠然とした「音楽」というものに対する不安や期待ではないかと考えることができます。
このアルバムは2017年にリリースされた『Tokyo Rendez-Vous』という曲に収録された1曲で、ギター担当の常田大希さんが主催する自主レーベル「PERIMETRON」から発売されています。
つまりこの時点ではまだKing Gnuはインディーズで、CDも自主制作で作られていました。
元々King Gnuの中心人物である常田大希さんは、東京藝術大学に入学しクラシックを学んでいましたが、「もっと誰かのための音楽をやりたい」という理由で退学しています。
それは、クラシックのように嗜好性の高い音楽ではなく、多くの人々に聞かれるいわゆるJ-POPへの参入への強い思いがあったようです。
その当時の気持ちが歌詞に反映されているのではないかと推測すると、「あなた・蜃気楼=音楽」と解釈できます。
大勢に愛される音楽もあれば、優れているのに誰にも知られず売れない音楽もあります。
正解の無い答えを探し続ける音楽活動は常に不安と期待が表裏一体で、必死でつかみ取ろうとするも蜃気楼の様に消えてしまいます。
音楽の流行は常に移り変わっていくもので、次はどんなアーティストが売れるのか、どんな楽曲が人気になるのかということはほとんど予測不可能です。
それでもアーティストとなることを志す者としては、予測不可能ながらも手探りで進んでいくことしか出来ません。
しかし、つかみ取ろうとすることへの執着や、制作活動そのものに感じるカタルシスは消えることがなくこれからも追い求め続けるという前向きな姿勢をも感じ取ることが出来ます。
2番
鏡の前のお前は一体誰? 最早その顔別人だぜ
無駄な荷物を捨て去って 過去嘲笑って
生きることは大変で 歩いてりゃ誰か失って
それでも誰かのため行きたいって(偽善か?)
視線は関係ないぜ わかったように見えてる世界は錯覚だらけ
あなたが蜃気楼に見えたの
あなたは蜃気楼 無邪気に笑ってみせて
あなたは蜃気楼 僕を振り回して
あなたは蜃気楼 無邪気に笑ってみせて
あなたは蜃気楼 僕を振り回して
あなたは蜃気楼 僕ら通じ合って バカにしないで
あなたは蜃気楼 後戻りなんて 無理だって
決意と同時にどんなことをしてでも突き進むと決めた自分は、過去の自分と比べると随分と様変わりしてしまっていた。
しかしそんな過去は単なる思い出で、無駄なことに固執していた自分なんて今思えばなんとも可笑しいものである。
生きていくためには引き換えに失ってしまうものもあり、それは時に大切な人であったりもする。
しかしそれでも自分には使命があり、人のために生きていくということに躊躇いはない。たとえそれが偽善だと言われようとも。
人からどう見られても構うことはない。何故ならこの世界の正解を知っている者などおらず、皆が蜃気楼を見ているようなものなのだから。
蜃気楼は相変わらずこちらに笑いかけている。
また近づけば掴み取れたと見せかけてバカにするように消えていくのだろうけれども、もう自分には後戻りをすることはできない。
今でこそ紅白歌合戦への出場が決まり新進気鋭のバンドとして持て囃されているKing Gnuですが、中心人物の常田大希さんの経歴だけを見ても様々な紆余曲折があったことが見てとることができます。
前身バンドである"Srv. Vinci"を"King Gnu"と改めて再出発をしました。
そしてアルバム『TOKYO RENDEZ-VOUS』は、King Gnuとなって初めての作品ということで、『あなたは蜃気楼』の様な実験的なアプローチから、印象的なリフを繰り返す『Vinyl』、チルで落ち着いた『NIGHT POOL』など様々な面を見ることが出来ると同時にKing Gnuの初期衝動の詰まった一作となっています。
King Gnuの楽曲は一般的にはポップスというよりもかなりマニアックな異色作の方が多いと感じますが、それでも自分たちのかっこいいと思うことをやっていこうという決意があります。
もちろんマニアックなアプローチが一般リスナーに届くかどうかは、一か八かの賭けである部分が少なからずありますが、それでも自分を貫くという選択をしました。
それが正解かはわからないけれども、自分たちのスタイルを貫いて蜃気楼を追い求め続けることを決意したということを歌っている楽曲であるということを感じ取ることが出来ます。
そして見事、奇抜な見た目やショッキングな歌詞の内容、それでいて歌謡曲的な聴きよいメロディは見事現代の人々のニーズに合致しました。
これが自分のためであろうとも人のためであろうとも、自分たちのやることは変わらず、ただ正解のない蜃気楼を追い求めることであるという、新進気鋭のバンドならではの想いが詰まった曲であると考えられます。
まとめ
今回はKing Gnuのあなたは蜃気楼の歌詞の意味を考察してみました。
「蜃気楼」という言葉に込められた音楽という正解のないものを追い求めることに対する期待や不安、そしてKing Gnuというバンドの出発によっていつかそこに辿り着くという確かな意志とその決意が感じられる一曲でしたね。