【米津玄師/TEENAGE RIOT】の歌詞の意味を徹底解釈 | 曲名の意味は?若者の気持ちを歌った歌を考察する
編集: ひいらぎ最終更新: 2020/9/19
TEENAGE RIOTという曲名の意味を考察
”riot”はよく「暴動」と訳されますが、”riot of~”と前置詞が付くと「多彩さ」「豊かさ」との意味を持ちます。
曲名には前置詞がないので、直訳するなら「ティーンエイジャーの暴動」とするのが妥当ですが、文法を無視して別の意味を考えることもできそうです。 事実、13歳から19歳までを表す“teenage”は感情の揺れ動きが激しい時期です。
些細なことで浮かれてはシーソーのように急激に落ち込んだり、小さな問題を割り切れず意固地になったり、妥協ができない分大人よりも深く人間関係に悩んだりします。
嵐のような胸中から生み出される主張は、たとえ未熟でも不合理でも、この時期にしかない輝きを秘めているように思います。
TEENAGE RIOTの歌詞の意味を徹底解釈
1番
潮溜まりで野垂れ死ぬんだ 勇ましい背伸びの果てのメンソール ワゴンで二足半額のコンバース トワイライト匂い出すメロディー
「潮溜まり」には、干潮の流れに乗り損ね取り残された海洋生物が見かけられます。
広い世界に戻れないまま孤独に迎える最期は、とても望ましいものではありません。
「背伸び」して吸うたばこや、セールで手に入れた憧れのスニーカー、やたら多用される横文字からは、いかにもティーンエイジャーらしい鬱屈が感じられます。 若い主人公は感情を音楽に変えたくてたまらないようです。
「匂い出す」という表現から、インスピレーションを受けた彼の頭に自然と「メロディー」が浮かんでくるのがわかります。
今サイコロ振るように日々を生きて ニタニタ笑う意味はあるか 誰も興味がないそのGコードを 君はひどく愛していたんだ
「サイコロを振るよう」な生き方とは、偶然や運任せでその日をやり過ごすだけの、自主性も目標もない生活のことだと考えられます。
味気ない日々に浮かべる「ニタニタ笑」いからは自嘲と諦念が感じられますが、そこに「意味」を問うていることから、主人公が現状に不満を感じ違う生き方を望んでいることが伺えます。
「君」は不特定の他者と捉えることができますが、ここでは前後の文脈を踏まえ過去の主人公自身と解釈します。彼は音楽を「ひどく愛していた」ので、退屈な毎日から抜け出すためにずっとギターを弾いていたのでしょう。
誰も見向きもしてくれなかったようですが、周囲の評価を無視できる程に彼の熱意は強かったのだと思われます。
煩わしい心すら いつかは全て灰になるのなら その花びらを瓶に詰め込んで火を放て 今ここで 誰より強く願えば そのまま遠く雷鳴に飛び込んで 歌えるさ カスみたいな だけど確かな バースデイソング
「瓶」とは火炎瓶のことでしょう。ガラス瓶などに液体可燃物を詰めて作る簡易的な爆弾です。ここでは液体の代わりに「煩わしい心」の欠片である「花びら」を「詰め込んで」います。
色鮮やかな「花びら」は、どんな火花を散らすのでしょうか。 「雷鳴」には暗雲を駆け抜ける素早さと力強さ、音だけで心臓を震わせる破壊力が備わっています。先に火炎瓶が登場しているので、ここでは同時に爆音も表現していると考えられます。
遠くまで轟く「雷鳴」に「飛び込んで」歌う「バースデイソング」は、主人公が自分自身に送る祝福と激励です。それは同時に空の下にいる多くの人々にも勇気を与えるはずです。
2番
しみったれたツラが似合うダークホース 不貞腐れて開けた壁の穴 あの時言えなかった三文字 ブラスバンド鳴らし出すメロディー
ティーンエイジの思い出が断片的に綴られています。 主人公は「ダークホース」と目されていたようですが、半ば皮肉だったのではないでしょうか。「しみったれたツラが似合う」ことから実際には活躍の機会はなかったと推察されます。
また、チームで演奏する「ブラスバンド」の練習を主人公がただ聞いていることから、彼の孤独感が伺えます。 「壁」に向かって鬱憤をぶつけたり、素直になれなかったり、彼にとってはあまり華々しい時代ではなかったようです。
真面目でもないのに賢しい顔で ニヒリスト気取ってグルーミー 誰も聴いちゃいないそのDコードを それでもただ信じていたんだ
「ニヒリスト」「グルーミー」と、明るい印象の「Dコード」は相容れない要素に思われます。しかし主人公が「信じていた」のは「Dコード」の方です。
悲観的な態度の方がクールに見えてしまうのは、ティーンエイジ特有の抗い難い性質のように思われます。音楽に力があることを本当はひたむきに「信じていた」主人公も、その性質に飲まれていたようです。
「それでも」、誰にも認めてもらえずとも奏でることを止めなかったところに彼の意志の強さが現れています。
よーいどんで鳴る銃の音を いつの間にか聞き逃していた 地獄の奥底にタッチして走り出せ 今すぐに 誰より独りでいるなら 誰より誰かに届く歌を 歌えるさ 間の抜けた だけど確かな バースデイソング
本来は「よーいどん」で切るはずだったスタートダッシュを、主人公はしそびれました。「いつの間にか」自分だけが取り残されていることに気付いたようです。 「地獄の奥底」は、それ以上落ちようのない絶望の限界値です。
「タッチ」は走者の変更を意味しますので、ここでは落ち込んでばかりだった状態からの意識的な脱却と解釈できます。 孤独を知る主人公だからこそ、孤独な誰かの心に響く歌がわかります。周囲と足並みが揃わない彼は確かに間抜けに見えるかもしれません。
それでも人生を作り変えようと足掻く後ろ姿は、よく似た苦しみを抱えた人の目には、追いかけたくなる程格好良く映るはずです。
持て余して放り出した叫び声は 取るに足らない言葉ばかりが並ぶ蚤の市にまた並んで行く 茶化されて汚されて恥辱の果て辿り着いた場所はどこだ 何度だって歌ってしまうよ どこにも行けないんだと だからこそあなたに会いたいんだと 今
「持て余して」つまり上手く処理しきれなかった感情は「叫び声」になって「放り出」されます。 周りの人々はそれを「取るに足らない言葉」として、不用品を片付けるための「蚤の市」に「並」べます。
「また」とあることから、主人公がぞんざいな扱いを受けたのが一度や二度では済まないことがわかります。 心からの「叫び」を馬鹿にされ否定され、苦い経験を重ねるうちに、主人公はかつて自分がいたのとは違う「場所」へ「辿り着いた」ことに気付きます。
しかし、そこがどこなのか判然としません。 「どこにも行けないんだ」との歌声は、どうしても望む「場所」へ行き着けない彼の苦悶を表しています。
続く一節に登場する「あなた」は、特定の人物ではなく、主人公と共感し合える誰か、苦しみを分け合い励まし合うことのできる誰かだと捉えられます。
煩わしい心すら いつかは全て灰になるのなら その花びらを瓶に詰め込んで火を放て 今ここで 誰より強く願えば そのまま遠く雷鳴に飛び込んで 歌えるさ カスみたいな だけど確かな バースデイソング
一度解釈したので割愛します。
La fin...