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【ぬゆり/命ばっかり】の歌詞の意味を徹底解釈 | eveもカバーした一曲を考察!

編集: ひいらぎ最終更新: 2020/9/19

目次
命ばっかりという曲名の意味を考察
命ばっかりの歌詞の意味を徹底解釈
1番
2番

命ばっかりという曲名の意味を考察

曲名の『命ばっかり』とは、どういう意味でしょうか。この曲名の「命」の読みは「いのち」です。そのため、国語辞典的な意味としては「生物が生きている限り持続している肉体や精神の活動を支える根源の包括的な呼称、またそれが続く間」(出典:新明解国語辞典)とされています。また、「唯一のよりどころとなる、最も大切なもの」(出典:明鏡国語辞典)という意味もあります。

この曲名の「命」は歌詞を見る限り、今紹介した「根源」「期間」「最も大切なもの」の全ての意味を持つと考えられます。しかし、その中でも特に「最も大切なもの」の意味合いが強いように思います。

そして、「ばっかり」ですが、「ばかり」という副助詞の音が変化してできた言葉です。そして、「ばっかり」は「ばかり」の意味のうちの「〜だけ」という限定の意味を持ちます。

自分の最も大切なものだけが……どうなのでしょう。「ばっかり」の後ろには省略された言葉があると考えられます。「命ばっかり」がどうなのでしょうか。歌詞を見ていきましょう。


命ばっかりの歌詞の意味を徹底解釈

1番

日々を磨り潰していく貴方との時間は
簡単なことじゃ許せないくらいに
おかしくなってしまった
安心したいだけの 口先だけじゃ
いや
ぬゆり -命ばっかり

解釈毎日を過ごしていく「貴方」との時間(及び関係)は
簡単に修復することができないくらいに
おかしく捻れてしまった
安心するための口先の言葉だけでは
いや、もう安心できない

この冒頭の歌詞で「貴方」という2人称が出てきます。これをどう解釈するかでこの先の歌詞解釈が変わってきます。

この冒頭部分だけでは「貴方」をもう1人別の人間がいると考えることもできます。「おかしく捻くれてしまった」「安心するための口先の言葉だけでは いや」などの歌詞から恋愛を連想することもできます。しかし、本当にそうでしょうか?

この曲のPVを見てみると、所々に「大勢の他者」「身元不明な他者」は出てきますが「特定の他者」は出てきません。特定の登場人物はずっと主人公1人だけです。PVはその曲に合わせて作られるので、解釈の重要な手がかりになるのではないかと思います。

PVを踏まえると、この「貴方」を特定の他者に限定するのは難しいのではないかと思います。となるとこの「貴方」は誰でしょうか?

それは、「もう1人の自分」です。「自分の中にいるもう1人の自分、特に理想の自分」を表しているのではないかと思います。「本当の自分はもっと違うはずだ」と思っているのでしょうか?

また、「貴方との時間」の「時間」は時の意味だけでなく関係性なども含んでいるのではないかと思います。「〜との」という連語は「〜を相手にする」という意味で用いられているでしょうから、現実の自分と、理想の自分の捻れや隔たりを歌っているという解釈は妥当ではないかと思います。

そして、その現実と理想の隔たりを安心させようとする自分自身の口先だけの言葉じゃ、もう安心できないのです。自分自身の言葉を信じられなくなっている、言ってしまえば、否定しているのです。

歌詞の「いや」はひらがなです。もちろん「嫌」という漢字に変換できないこともありませんが、「いやいや、そうじゃなくって」などと使う「いや」という解釈もできます。歌うときは「いや」を三回繰り返しますしね。もしも「いや」を漢字にするなら「否(いな)」でしょうか。

主人公が現実と理想の乖離に苦しんでいるのが伺えますね。


どこまでも単純だ ここまでと悟った
座り込んでもう歩けなくなる
ぬゆり -命ばっかり

解釈どこまでも現実の自分は単純で、理想に近づけるのはここまでだと悟った
悟ってしまった途端、気が抜けてしまい何もする気が起きなくなってしまう

主人公は自分という人間が単純であるために、もう理想には近づけないと悟ってしまいます。そして、それ故に何もする気が起きなくなって、何もできなくなってしまいます。「座り込んで歩けなくなる」という歌詞はこのような状態の比喩ではないかと思います。


最初だけじゃないなら 際限もないならば
どこへだって行けるはずさ
ぬゆり -命ばっかり

解釈最初だけ追い求める理想じゃないなら、際限のない理想ならば
僕はどこにでも行けるはずさ

理想が普遍的なものであれば、どこにでも行ける、どんな地点にも到達できるはずなのに、という主人公の気持ちが現れています。


遠くへ 遠くへ 水の味を覚え
街路に目が眩み夜を越えてしまう
遠くへ 遠くへ 動けない僕のことを忘れて
ぬゆり -命ばっかり

解釈理想は遠くへ遠くへ、水(=命の水=人生)の味(=趣、良さ)を覚えてどんどん進んでしまう
現実の僕は理想との間の街路(=距離)に目が眩み、停滞している間に夜を越えてしまう
その間にも理想は遠くへ遠くへと進んでしまう
動けない現実の僕のことなど忘れて

理想の自分は遠くへ遠くへとどんどん先に歩いて行ってしまいます。人生を例える表現に「命の水」というものがありますから、水=命という解釈も考えられます。味には味覚以外にも「趣・含蓄・良さ」という意味もあります。

ですから、理想の自分は人生の趣を覚えてどんどん進んで言ってしまうという解釈が成り立ちます。

反対に、現実の自分は理想と現実の間の距離の遠さに眩暈を覚えて立ち止まってしまい、そのまま夜を越してしまいます。そして、理想の自分が遠くへ遠くへ、立ち止まってしまった自分のことを忘れて進んでしまう、と歌っているのです。


知らないを知りたかった
知り得ることはなかった
水圧で動けなくなっていく
また蝶の夢を見る
ぬゆり -命ばっかり

解釈自分は知らない自分を知りたかった
しかし知らない自分を知り得ることはなかった
現実の自分は人生の圧力で何もできなくなっていく
そして再び現実から目を背け、蝶(=魂)の夢(=儚い理想の願望)を見る

「知らないを知りたかった」「知り得ることはなかった」という歌詞は解釈が分かれる部分だと思います。なぜなら目的語がありませんからね。「知らない」という状態を知りたかったけれど知り得ぬことはなかった、という解釈もできます。

ただ、PVを見てみると「知らないを知りたかった」の時には主人公が、「知り得ることがなかった」の時には身元不明な他者が椅子に座っています。この身元不明の他者を前出の「貴方」と仮定すれば「理想の自分」という解釈が成り立つと思います。

そして、水圧ですが前述のように水を「人生」と解釈することができます。理想の人生、周りから押し付けられる人生、そして、今まで過ごしてきた人生に押しつぶされそうで何もできない、という描写になるのではないかと思います。

だから、辛い現実から何度も目を背けて夢を見ているのです。「現実から目を背け」というのは深読みしすぎな気もしますが、「夢を見る」という歌詞、そしてこれ以後の歌詞からそう考えてもズレはしないのではないかと思います。

「蝶」は魂や象徴とされます。また、「夢」には「将来の希望・願望」「儚い」「現実からかけ離れている」という意味もあります。よって「魂の現実からかけ離れている儚い理想の自分という願望」を夢として見ている、と解釈できます。なかなか辛い状態ですね。


好きになりたかったんだ
好きになれなかったんだ
「正しい」を理想としていたら
置いて行かれた
追いつけなくなったんだ
ぬゆり -命ばっかり

解釈現実の自分を好きになりたかった
けれど好きになれなかった
夢で見る「正しい」ことを理想としていたら
理想の自分に置いていかれた
そして、理想の自分には追いつけなくなってしまった

主人公は現実の自分を受け入れて好きになりたかったのですが、それは叶いませんでした。PVでも夢を見ている自分を否定していますね(この時の夢を見ている動作主は「現実の自分」です)。

そして、夢の中の自分にとっての「正しい」を理想として掲げていたら、寧ろいつのまにか理想の自分から離れて置いていかれてしまった。そして、もう理想の自分に追いつけなくなってしまった、と解釈できます。

主人公は自身の理想の「正しい」に盲目的になってしまい、現実世界とうまく折り合いがつかなくなって、思い描いていた理想の自分とズレてしまったのかもしれませんね。そして、それは修正できる程度のものではなくなってしまったのです。


2番

当たり前に過ぎていくはずだった時間は
何十年とも感じるほど長く
眠りすぎた頭痛で這い出してきた僕は
どこにももう行けやしないから
ぬゆり -命ばっかり

解釈当たり前に過ぎていくはずの毎日の時間は
まるで何十年にも感じるほど長い
眠りすぎた(=現実から目を背け続けた)ことによる頭痛(=危機感)で(現実に)這い出てきた僕は
どこにももう行けるわけがない(行くべき道がわからない)から

前述の歌詞で主人公が「現実から目を背けた」と解釈したのはこの2番のはじめの歌詞を考慮してです。夢を見ていたから、眠りすぎてしまったのです。

もう少しだけ……と現実から目を背け続け、それでもさすがに「頭痛」というシグナルから「そろそろヤバいぞ」と現実に目を向けた時には、もう手遅れで行くべき道、何をすべきかもわからなくなってしまいました。

よって、その場に停滞するしかなく、変化のない日々は長くて長くて、何十年にも感じるようになってしまったのです。


どこまでも純情だ それでしかなかった
飾らないで 分かち合いたいから
ぬゆり -命ばっかり

解釈現実の自分はどこまでも純情で、それでしかなかった
自分を飾らないでいた 自分自身を理想でも現実でも分かち合いたいから

1番の「どこまでも単純だった」と対応する部分です。現実の自分は理想を実現するには純情でしかなかったのです。主人公は「自分自身」を飾らずさらけ出していいました。というのも主人公は理想でも現実でも偽らずに本来の自分でいたかったのです。その心が純情すぎたのです。


貴方の影が眩む 見失ってしまった
また眠れない夜になっていく
ぬゆり -命ばっかり

解釈貴方(=理想の自分)の影が眩んで、見失ってしまった
理想を見失い、また眠れない夜(=現実逃避できない夜)を過ごすことになる

またまた「貴方」の登場です。久しぶりに現実を見た主人公は今度は理想の自分を見失ってしまいます。また、理想の自分を見失ったことで現実から目を背けて夢に理想を見ることができなくなってしまいました。


「どうしたいの」なんて問えば「どうもしない」なんて返す
貴方はもう何も教えてくれないの
今日食べた食事も 行きたい場所さえもう
何にも どれをとってもわからないだけだ
ぬゆり -命ばっかり

解釈「どうしたいの」と自分の中の自分に問いかけても、もう1人の自分は「どうもしない」と返す
理想の自分、もう1人の自分は何も教えてくれない
今日何を食べたのか、行きたい場所さえもう
何一つわからなくなってしまった

理想を見失った主人公は「どうしたいの」と自問しますが、もう1人の内なる自分は「どうもしない」という投げやりな答えを返します。自分がどうしたいのか、さっぱりわからなくなってしまった状態です。

そのため、自分が何を食べ、どこに行きたい、何をしたいのかさえ、何一つ自分の意思がわからなくなってしまいました。


遠くへ 遠くへ 水の味を覚え
街路に目が眩み夜を越えてしまう
遠くへ 遠くへ 動けない僕のことを忘れて
ぬゆり -命ばっかり

一度解釈したので割愛します。解釈

一度解釈したので割愛します。


貴方の横顔を見て引け目を感じてしまった
救われたいとだけ喚く僕はきっともう我楽多だ
ぬゆり -命ばっかり

解釈描いていた理想の自分の横顔を見て引け目を感じた
救われたいとだけ喚く何も行動を起こせない現実の僕はきっともう我楽多でしかないだろう

描いていた理想の自分と現実の自分を照らし合わせて、主人公は引け目を感じました。救われたいと喚きはするけれど、主人公自ら行動を起こしてことはないからです。そんな自分を我楽多だと主人公は自嘲しています。


思想犯はもう止めた
「分かれない」を悟っていた
とりとめのない言葉だけでは
薄紙を剥がせない
ぬゆり -命ばっかり

解釈思想犯でいること(=理想ばかりを追い求めること)はやめた
現実の自分も内なる自分も分別できないものだと悟っていた
とりとめのない、大したことのない言葉だけでは
現実の自分と理想の自分を隔てようとする薄紙を剥がすことができない

主人公は自身の理想を、自分の「正しい」を追い求めることをやめました。現実の自分も、理想とする自分も、どちらも同じ自分自身だと悟っていたのですを 。

しかし、今まで現実の自分と理想の自分は「追う・追われる」の立場でした。その隔たり(薄紙)をなくすためには、とりとめのない、重要性のない言葉ではなくもっと中身のある言葉が必要なのです。


普通に固執することが
怖くてもう泣きそうだ
自堕落を鏡で見ていたら
薄っぺらだ
薄っぺらな僕だった
ぬゆり -命ばっかり

解釈普通(=理想を追い求めること)に固執することが
怖くてもう泣きそうだ
自堕落な自分を鏡で見ていたら
そこに映るのは薄っぺらだった
薄っぺらな自分だった

現実も理想も分離できないと悟った主人公は、世間で普通とされる理想を追い求めるということに固執するのが怖くなり、もう恐怖で泣きそうになりました。

そして、行動を起こさない自身を自堕落だと自虐しながら鏡を見ていると、そこに映るのは何も中身がない薄っぺらな自分でした。理想も抱かず、行動も起こさず、ただ停滞している自分。そんな自分は薄っぺらな人間にしか見えなかったのです。


ぼくだ
僕だけだったんだ
ぬゆり -命ばっかり

解釈自堕落なのはぼくだ
周りに比べて僕だけが自堕落なんだ

理想の自分もなく、ただ怠惰で自堕落な現実の自分が周りから取り残されてそこにいるだけ、という主人公の絶望感が込められています。

理想という大切なものを手放した自分と周りを対比しているかのようなエンドです。

「理想」という大切なものばかりが先行してしまうから捨てたのに、結局自分は自堕落なままで、無意味に生を、命を消費していく。それに対する罪悪感が感じられます。これは特に現代人が感じやすいものではないでしょうか。だから、耳に残るメロディラインも相まって大ヒットしたのでしょうね。

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