【米津玄師/fogbound】の歌詞の意味を徹底解釈 | BUMPを意識した歌詞は何を意味するのか?
編集: ひいらぎ最終更新: 2020/9/19
fogbound ( + 池田エライザ)という曲名の意味を考察
「fogbound」とはどういった意味でしょうか?
これは日本語に直訳すると「霧が立ち込めた」「(船や飛行機などが)霧で立ち往生した」という意味の形容詞です。
だから歌詞にも「航海」や「船」や「座礁」という言葉が出てきます。この「霧が差し込めている」状況は先行きの見えない、あまり良くない状態を示す言葉です。米津玄師の曲は、彼が元々自閉症やうつ病だったこともあり、そういった負のイメージをもったものが多いです。
しかし、そんな中で米津玄師を支えていたのは彼が当時聴いていた音楽でした。
米津玄師本人も言っていましたが、この「fogbound」という曲は、先行きの見えない10代の時代に彼を支えていた音楽に対する歌を数多く引用しながら、恋愛の要素を取り入れ、終始同じ状況で歌詞が進んでいきます。その象徴として、この曲はゲストボーカルに池田エライザさんを招いています。
そんな10代の時代に対する思い入れが強い米津玄師だからこそ、彼は「fogbound」というタイトルでツアーも行いました。
fogbound ( + 池田エライザ)の歌詞の意味を徹底解釈
1番
「このキャンディが溶けてなくなるまではそばにいて」と言った 切れかけで点った蛍光灯の下で 現れては消える テーブルを焦がして残った跡が 嫌に目に付いて笑える どこで道を間違えたのか 見失ったポラリス 航海の途中 悪魔じゃない 天使なんかじゃない 現れては消える
(君とは上手くいかなくなったけど)キャンディの溶ける少しでも長い間そばにいてほしい。
上手くいかず、傷ついた跡が目につく。
先行きが見えない。いいことも悪いことも忘れた。
米津玄師は解釈が難しい曲がとても多いですが、「fogbound」は特に難しいです。この「このキャンディが〜そばにいて」という表現は10代の終わりに米津玄師が付き合っていた彼女をモチーフに、先行きの見えない恋愛についてのことであると思われます。
その不透明さは「どこで道を間違えたのか」というところに表れています。また、「ポラリス」という言葉ですが、これは米津玄師と親交があり、過去にツイキャスで弾き語りも行なっていたヒトリエの「ポラリス」から来ていると思います。
このように、この曲はさまざまな他のミュージシャンの曲から引用をされています。
ようそろう 向かうのはホロウ お守り賜う セントエルモ ようそろう 目の前は最深部 ブラックアウトの向こう もう一度
それでも進もう。
どうか(影響を受けた音楽の力にでも)守ってもらおう。最後まで。
韻を踏んだサビです。「ようそろう」は航海で船を前進させるときに言う言葉で、米津玄師はツイッターでこの言葉を投稿したり、「百鬼夜行」という曲の歌詞にも登場したりします。しかし、前進しているのにもかかわらず、先行きが見えないので、「向かうのはホロウ」です。ホロウは「虚ろ」という意味です。
また「セントエルモ」は悪天候のときに船のマストの先端が光ることを言います。これも「虚ろ」な様子を表しています。また、この「セントエルモ」という言葉は、米津玄師が一番影響を受けたアーティストであるBUMP OF CHICKENの「セントエルモの火」という曲からきていると思います。
他にも「ブラックアウト」という言葉がありますが、これも恐らく本人が影響を受けていると言っていたASIAN KUNG-FU GENERATIONの曲名と、東京事変の曲名からきていると思われます。
2番
悲しみで船を漕ぐ救えないビリーバー メロドラマはもうおしまいにしようね
(影響を受けた音楽の前向きな歌詞も)結局今の自分に見立てると救えない。
恋愛はもう終わりだ。
ここではやはり行き詰まった恋愛について言っていることがわかります。ここで出てくる「ビリーバー」という言葉もまた、BUMP OF CHICKENの「sailing day」という曲の歌詞からの引用です。
これは航海についての曲で、米津玄師が好きだったワンピースの映画の主題歌にもなったので、間違いなく意識していると思います。
北へ向かうハイウェイでパンクして呆然 割れたタイヤが笑える コーヒーを零して染みた跡が 嫌に目に付く 夜を誘う怠めの音楽 トレモロの響き 座礁の途中 アップアンドダウン ナイトクルージングなんていいもんじゃない
進もうにも障害が立ちはだかり上手くいかない。
そんな傷跡が目立ち、気だるさだけが残る。
でも上げ下げがありながらも進んでいくしかないだろう。
ここでなぜか「ハイウェイ」「パンク」「タイヤ」という言葉が出てきます。なぜ「船」から乗り物が変わったかは不明ですが、どちらにしても米津玄師が10代に経験した挫折感を示しています。
とはいえ、まだ「座礁」や「ナイトクルージング」という言葉は出てきています。また、この「トレモロ」は恐らくRADWIMPSの曲名から取っており、米津玄師が過去にツイキャスライブで頻繁に弾き語っていた曲でもあります。
もうよそう 思い出はメロウ 前頭葉切ろう なんて妄想 もうよそう 傷つけ合うのを お帰り願う もう二度と
思い出なんていらないから頭で考えるのをやめて忘れよう。
でもそれもできないからそんなのも妄想。傷つけあうのもやめよう。
もう帰って、二度と会わないようにしよう。
韻を踏んだ2つ目のサビです。先行きが見えない状況では、「もうよそう」と引っ込み思案になるものです。「前頭葉切ろう」というのはとても怖くて不思議な表現ですが、頭で考えるのをよそう、ということである可能性が高いです。
そして、この「fogbound」は先行きの見えない恋愛の歌と述べましたが、「傷つけ合うのを〜もう二度と」でそれは明確に表されています。また、「メロウ」は椎名林檎の曲名から取っていると思われます。
痣だらけ頼りないサンデードライバー メロドラマはもうおしまいにしようね
君はもう頼りない。恋愛はもうやめよう。
サンデードライバーとは、日曜日しか車を運転しないような、あまり日常的に車を運転していない未熟な人をさす言葉です。
これも「船」ではなく「車」についてのワードですが、恋愛における「相手」を表しています。
明るい部屋にあなたとふたり 暗い部屋にはあなたはいない 明るい部屋にあなたとふたり 暗い部屋にはあなたはいない あてどなく彷徨う笑えないドリーマー メロドラマはもうおしまいね
あなたがいれば気持ちは明るくなり、あなたがいないと気持ちは暗くなる。
(影響を受けた音楽の前向きな歌詞も)結局今の自分に見立てると救えない。恋愛はもう終わりだ。
これは「あなた」といれば気持ちが明るくなったが、「あなた」がいないと逆に暗くなることを言っています。だから、このまま別れてしまう未来が暗く、「船」の行き先が不透明であるということを言っています。
この「ドリーマー」という言葉も、前述のBUMP OF CHICKENの「sailing day」に「ビリーバー」という言葉と共に出てきています。ここも確実にBUMP OF CHICKENを意識しています。
La fin...