【DECO*27/モスキート】の歌詞の意味を徹底解釈 | 蚊を通して描かれる男女の複雑な愛
編集: ひいらぎ最終更新: 2020/9/19
モスキートという曲名の意味を考察
今回は、主人公を女性と設定し、その相手を男性として解釈していきました。
タイトルにある『モスキート』とは、“蚊”という意味で、人間を吸血し痒みや痛み・腫れを残す厄介な虫のことを指します。
この曲では主人公の血(愛)を欲しがる彼と、その彼に甘んじて行為を受け入れる主人公の姿が描かれています。
はじめは厄介に感じていた彼の自分を求める行為も、主人公は次第に受け入れていくようになり、そのうち依存するようになっていきます。最後はいったいどちらが愛を吸い尽くす吸血人間になってしまったのか…。
主人公目線で語られる曲は、これからモスキートが活発に飛び回る季節にピッタリな一曲かもしれません。
モスキートの歌詞の意味を徹底解釈
1番
いない いないよ
もう終わったことでしょ
「愛して」と腐っていく
すでに終わってしまっているからね
あなたはいつまでも貰えない愛情をひたすら待っている
主人公ともう一人の登場人物であるパートナーは恋愛関係または肉体関係がありベクトルは違うものの依存し合っているように思います。
今回は主人公を女性、パートナーを男性として解釈を進めていきたいと思います。
パートナー(以下:彼)は主人公の愛をいつも欲しています。しかし、主人公はもうこの関係を終わらせようと、彼に求められるのを拒んでいます。
それなりのもんを頂戴 次をしたいなら
NOと言うかも分かんないけれど
もう止まんない でもなんか勿体無い?
損か得かで量っちゃくれないか
夢の中なら 夢が見れるの
確かなものほど 曇っていく
ダメと言われてしまうかもしれないけれど、
この気持ちはもう止められないんだ
損得勘定で物事を量ってくれないだろうか
夢の中なら私の望むままになるの
確かなものほど見えなくなっていく
いつまでも自分の愛を待ち続ける彼に対し、主人公は彼を愛することに“等価”を求めます。
そんな要求をされても、彼は主人公にとって得になるようなものは何一つ与えることができません。
主人公にNoと言われることなんて承知の上で、彼は主人公の愛を欲しがります。
これではまるで利害が一致していないと思う主人公ですが、自分に対して中毒のような症状を発症している彼に、いつしか諦めのような感情を抱くようになったのです。
やっぱひとりがいいんだもん
だってもう要らないんだもん
このドキドキは 味がしないの
どうせどうせ 君だけがハイになるんでしょ
もうあなたのことは必要がない
だってこの胸の高鳴りはもう飽きてしまった
どうせあなた一人がハイになるだけだから
主人公はきっぱりと“彼は私に必要がない”と言い切ります。
彼の深く重く足枷のように感じる愛情から逃げたいのでしょう。たとえ彼と愛し合ったって、彼が一方的に快楽を得るだけで主人公にはなんの得にもならないのです。
きっと求め合うほど
もっと不味くなるから
これ以上嘘を 重ねてみても
どうせどうせ 私がバカを見るのなら
サヨナラのある愛にしといて
これ以上嘘をつき重ねても馬鹿を見るのは私の方でしょ
別れを前提にした恋愛がしたい
一見、主人公から彼に向く感情は拒絶などの負の感情だけのように感じますが、主人公もまた彼を徹底的に突き放すことが出来ずにいます。
過去の彼の優しさや思い出によって主人公もまた彼に縛られているのです。
2番
しない しないよ
もう終わったことでしょ
最初から決まっていた?
そんなこと最初から決まっていたじゃない?
もう身体の関係は終わりにしたい。もうこの関係は破綻している。
彼だって、二人の関係がおかしなものになってきているのを気付いているはずでしょ?と、主人公は問いかけます。
しかし、彼はこの関係が歪んでしまっていることにも既に気付けなくなってしまっているのです。
思い出は愛し放題 時間制限もない
だからブクブク太ってしまうのさ
「もう入んない」そんな限界はない
ごちそうさまと 歌ってくれたらな
だから思い出に浸かって抜け出せなくなる
「もうこれ以上思い出を持っていられない」
そんな限界もない
あなたがもういらないと言ってくれたらいいのに
彼との思い出はどれも素敵なものばかりです。
過去の彼との記憶を思い出すほど、主人公は彼から抜け出せなくなります。
過去の彼はもう今の彼ではないことは、主人公自身も頭の片隅ではわかっているのですが、どうしても過去の彼に現実逃避してしまうのです。主人公はこんな自分に、「いっそ彼が別れを告げてくれればいいのに」とさえ思ってしまいます。
The more I dive into you.
my heart goes breaking in two
救えないほどに染まっていく
私の心臓は二つに打ち砕かれるの
私たちのことはもう誰にも救うことができないんだ
ついには主人公までもが、彼がいないとどうにもならないと彼に依存し縛られていきます。
女性は相手からあまりに依存されると、気持ち悪さや迷惑さから相手を拒否する場合と、「自分がいなくてはこの人は駄目になってしまう」という思考になり自身も相手を求めてしまう場合があります。
この主人公は、過去の彼にまだ愛情があったことから、後者のような思考回路になってしまったのでしょう。依存し合った二人を止めることはもう誰にもできません。
やっぱひとりは嫌だな
ちょっとだけならいいかな
吸われるたびに 楽になれるの
どうせどうせ お互い様で笑えるでしょう
ちょっとだけ血を吸われるくらいならいいかな
あなたに血を吸われるたび私は楽になる
あなただって私の血で楽しくなれるのだからお互い様だね
彼がいないと一人ぼっちになってしまう主人公は、ひたすらに彼を求めるようになります。
ここで血を吸うなどと言った吸血の表現が出てきますが、これは曲名の通り『蚊』の吸血行為のことであると解釈できます。
蚊は血を吸って生を得ていきますが、吸われる側は痒みや痛みを伴いますよね。普通なら『嫌だ』と感じるものですが、主人公にとっては彼に愛されることができるのなら「少しの痛みや痒みくらいならいいや」とその行為を許すようになります。
やがてその痛みや痒みは快楽になっていき、二人にとってその行為はお互いの欲を満たしあう行為になっていくのでした。
やっと堕ちていけるね
嫉妬怠惰のホールへ
腐りかけほど美味しくなるの
どうせどうせ 正しくはないと分かってるから
幸せだけを用意しといて
こんな結末がよくないことはわかっている
だからせめて私たちだけでも幸せだと思う結末を用意しておいて
共依存状態に陥り、お互いに生活を疎かにしたり、嫉妬に狂うようになっていきます。
ここまで依存し合い、生活に支障がでてくると、おそらく幸せな結末は自分たちに訪れはしないだろうと、主人公は悟ります。
そろそろかな
起きなきゃな
効き目が切れてしまうよ しまうよ
待って
だってまだ“私”の隣にいたいよ
卵を産み出すまでは
待って!まだあなたの隣にいたいよ
子孫を残すまでは
依存し合うのはいけないと思う心が、主人公を稀に現実世界へと引き戻そうとします。
しかし、主人公は彼のいない世界にいくことを拒み、彼の子供を産みたいとまで考え始めます。
やっぱ二人がいいんだよ
ずっと強がってたんだよ
戻る形を忘れた愛は
どうしてどうして 歪んでも尚美しいの
闇に落ちる一方の愛はどういうわけか歪んでいても美しいものだね
ずっと彼を拒み続けていた主人公ですが、本当はずっと彼と二人で幸せに人生を歩みたかったのです。
しかし、主人公が遠い昔に描いていた幸せな交際ではなく、現在は嫉妬と快楽行為に溺れあう醜い関係になってしまっています。
もうどうあがいても、過去の自分たちに戻ることはできないのです。
吸って生きて逝かなきゃ
だってモスキートなんだもん
忘れられない味があるのよ
どうせどうせ 私が枯らしてしまうから
サヨナラのある愛にしといて
忘れられない血の味があるんだ
どうせ私があなたを死なせてしまうから
別れのある愛だと知っておいて
蚊は吸血しないと命を繋げません。人間の血を吸って生きて、そして死んでいきます。
蚊は人間の血ならどの味も一緒に感じているというわけではなく、やはり血液型やそれ以外の理由から、好みの味があるようです。
彼もまた、主人公の味を好みます。主人公は、彼に自分の血(愛)を吸わせ、自分一人のモノにしながら彼を看取りたいと思っています。
もう一つの解釈として、彼を愛するあまり、主人公の方がモスキートのような状態になってしまい、彼の血(精力)を吸い尽くしてしまうとも考えることが出来ます。
どちらにせよ、二人に訪れるのは互いを貪り尽くした後の救いのない未来なのでしょう。終わりの見えない闇に落ちていくのではなく、どんな形であれ、“別れ=終わり”のある愛であるようにと、願わずにはいられません。