【kemu/拝啓ドッペルゲンガー】の歌詞の意味を解釈
編集: ひいらぎ最終更新: 2020/9/19
拝啓ドッペルゲンガーという曲名の意味を考察
『拝啓ドッペルゲンガー』という曲名はどういう意味を持つのでしょうか?
「拝啓」というのは手紙の書き出しで使う言葉ですよね。「つつしんで申し上げます」という意味で使います。ここから、「ドッペルゲンガー」に宛てて書かれた曲だという意味が推測できます。手紙の代わりに曲で伝えているのかもしれません。
そして、「ドッペルゲンガー」ですが、本来は幻影であり、超常現象です。伝承では「死の前兆」とされていますが、今回のドッペルゲンガーはこの類ではないようです。
まぁ、死ぬとはまた違う形の結末を迎えることになるのですが……。歌詞解釈を見ていきましょう。
拝啓ドッペルゲンガーの歌詞の意味を徹底解釈
1番
「どうもこんにちは君の分身です」
何の冗談か目を擦ってみる
影が二つ伸びて
そしてまた幕は上がる
解釈「どうもこんにちは君の分身です」
そんなことを言われて、何の冗談かと思い僕は目を擦ってみる
僕の影が二つ伸びて
そしてまた物語の幕は上がる
ドッペルゲンガーが主人公の目の前に現れるシーンです。「どうもこんにちは君の分身です」と言って現れた主人公と瓜二つの人影が言いました。この人影がドッペルゲンガーです。主人公の影が二つに伸びて、物語が幕を上げます。
「もう一人自分が居たらとあなたは言いました」
「そんな真摯な願いが僕を呼んだのさ」
そりゃ願ったとも
艱難辛苦 全ての代行者(エージェント)
解釈「もう一人自分が居たらとあなたは言いました」
「そんな真摯な願いが僕を呼んだのさ」
そうドッペルゲンガーは言いました。
そりゃ願いましたとも
艱難辛苦の日々の中で、全ての代行者(エージェント)が欲しいと
主人公は「もう1人自分がいたら」と言う願いを持っていました。その願いを受けて現れたのがこのドッペルゲンガーです。
主人公は艱難辛苦(非常な困難にあって苦しみ悩むこと)な日々を代行してくれるエージェントが欲しかったのです。
過程はいいから結果を下さい
無意味で無意義な代償
ねえ こんな事より
大事なことがあるんだよ いいだろ
「ええやりますやります 何でもやります
僕は君の分身です」
含み笑いで救済者(メサイア)は謂う
解釈過程はいいから結果を下さい
過程なんて無意味で無意義な代償だから
ねえ こんな事(=学校など)より大事なことがあるんだからいいだろ
「ええやりますやります 何でもやります
僕は君の分身です」
含み笑いで救済者(メサイア)は謂いました
主人公は「過程はどうでもいいから、結果だけが欲しい。過程なんて無意味で無意義な結果の代償なんだ。そんなことより大事なことがあるんだから代行してくれよ」とドッペルゲンガーに言います。
その主人公の言葉を受けて、「はいはい何でもやりますよ、僕は分身ですからね」とドッペルゲンガーは含み笑いをして言います。含み笑いははっきり声に出さずに笑うことを指しており、ドッペルゲンガーはこれから先の展開を予想してほくそ笑んでいるのでしょう。
拝啓ドッペルゲンガー 君は 君は誰?
嗚呼 混濁と交差して僕は誰?
ねえ有りもしない#0と#1
証明の根拠なんて何処にも
解釈拝啓ドッペルゲンガーへ
君は 君は誰ですか?
嗚呼 混濁と交差して僕は誰かわからなくなってしまった
ねえ有りもしない#0と#1を証明する根拠なんて何処にもないよ
主人公はドッペルゲンガーに君は誰と問い、思考が混濁して交わって、僕は誰と問います。そして、ドッペルゲンガーという幻影を、0と1で証明する根拠なんてないんだ、と言っています。
拝啓ドッペルゲンガー 誰は 誰は君?
蝕まれた存在に世界は気付かないね
鳴り止まない 醒め止まない 奇跡の輪廻が
狂った正解を染め上げて ルンパッパ
解釈拝啓ドッペルゲンガーへ、か。
誰?誰って僕は君でしょ?
蝕まれたあなたの存在に世界は気付かないね
鳴り止まない、醒め止まない
奇跡の輪廻が狂った正解を染め上げて
ルンパッパ
ドッペルゲンガーは主人公の問いかけに対し「誰って、僕は君だよ」と返します。そして、蝕まれた主人公に周りが誰も気づかないことを嘲笑します。主人公とドッペルゲンガー、2人の立場は狂ったままで世界に受け入れられたのです。
2番
どうも様子がおかしい月曜日
一つ二つと崩れゆく辻褄が
僕を猜疑する
「お前は一体誰だ」と
解釈どうも様子がおかしい月曜日
一つ二つと崩れていく日常の辻褄が僕を猜疑する
「お前は一体誰だ」と
月曜日に学校(PVで学校の椅子が出てくるのでそう解釈できるでしょう)に行くと、どうにも周りの様子がおかしい。学校で時間を過ごしていくうちに、自分とドッペルゲンガーの差異を感じ「僕って一体誰なんだ」と猜疑心を持ち、自分自身を疑います。
ちょっと待って
知らない昨日 知りもしない言葉
そうやっていつの間にやら影は溶けゆく
僕は何なんだろう
ねえどうか存在を返して
解釈ちょっと待って
知らない昨日に知りもしない言葉
そうやっていつの間にやら僕の影は溶けてゆく
僕って何なんだろう
ねえどうか存在を返して、と僕はドッペルゲンガーに言いました
知らない言葉や知らない昨日の話をされて「ちょっと待って」と主人公は思います。
主人公はいつのまにかドッペルゲンガーに自分の居場所を取られてしまったのだ、と気がつきました。そして、いつのまにか僕の存在は薄れて溶けていき、僕の方がドッペルゲンガーになっていきます。「僕という存在は何なんだろう」と主人公は自問自答します。
そして、主人公は「僕の存在を返して欲しい」とドッペルゲンガーに頼みます。
「生憎様だがこっちはこっちで随分心地が良くて」
「もうあなたの居場所は
此処にはない事分かってるんでしょ」
「ねえ奪われたんなら奪えばいいだろ
今度はお前の番だから」
含み笑いで侵略者(インベーダー)は謂う
解釈「生憎様だがこっちはこっちで君という存在でいるのは随分心地が良くて」
「もうあなたの居場所は
此処にはない事分かってるんでしょ」
「ねえ奪われたんなら奪えばいいだろ
今度はお前の番だから」
含み笑いで侵略者(インベーダー)は謂いました
主人公の言葉を受けてドッペルゲンガーは「生憎僕にとって君を乗っ取った生活は心地よいもので返す気は無い。
それに周囲だって僕のことを君(ドッペルゲンガーの方を主人公)だと思っている。僕に奪われたんなら、君も誰かのを奪えばいいじゃないか」と言います。含み笑いなのは目論見通り主人公の侵略が進んで嬉しいからでしょうね。
拝啓ドッペルゲンガー 君は 君は誰?
嗚呼 混濁と交差して僕は誰?
まあ そりゃそうかそうだよな
命の椅子は一つだけ
解釈拝啓ドッペルゲンガーへ
君は 君は誰ですか?
嗚呼 混濁と交差して僕は誰かわからなくなってしまった
まあ そりゃそうか、そうだよなと僕は思いました
命の椅子は一つだけしかないのだから
自分が何かわからなくなった主人公はドッペルゲンガーに問いかけつつも「そりゃそうだよな」と納得します。「命の椅子はひとつだけ」なのだから、自分とドッペルゲンガー、2つの人格が自分の身体にいることは不可能なのだと気づくのです。
拝啓ドッペルゲンガー 誰は 誰は君?
零れ落ちた一粒 乾き果てる前に
誰でもいい 何でもいい 器を下さい
狂った正解が染め上げて ルンパッパ
解釈拝啓ドッペルゲンガーへ
誰、誰って僕が君でしょ?
零れ落ちた一粒の涙が乾き果てる前に誰でもいい、何でもいい、僕が入る器を下さい
狂った正解が染め上げて
ルンパッパ
ドッペルゲンガーに「誰って聞かれても、僕は君だよ?」と返された主人公は涙を流します。
その涙が乾く前に、誰でも何でもいい、自分が入ることができる器が欲しいと泣くのです。世界は主人公とドッペルゲンガーの入れ替わりを何の抵抗もなく受け入れしまうのです。
PRAY
それはずうっと続くヒトの業の連鎖
PAIN
委ねあって許しあって満たされ往く
PRAY
欠けたピース 無価値のペイン 冀望また愛も
PAIN
託し合って生まれ替わるイニシエイション
PRAY
「僕のほうがちゃんと君を生きてやるから」
PAIN
「君も次の誰か ちゃんと救わなくちゃ」
PRAY
「もう分かってんだろ 何をすればいいかさ」
PAIN
どうか誰か僕に奇跡をくれよ
解釈祈る
それはずうっと続くヒトの業の連鎖
痛み
それをを委ねあって許しあって満たされ往く
祈る
欠けたピース 無価値のペイン 冀望また愛も
痛み
託し合って生まれ替わるイニシエイション
祈る
「僕のほうがちゃんと君を生きてやるから」とドッペルゲンガーは言いました
痛み
「君も次の誰か ちゃんと救わなくちゃ」とドッペルゲンガーは言いました
祈る
「もう分かってんだろ 何をすればいいかさ」とドッペルゲンガーは言いました
痛み
どうか誰か僕に奇跡をくれよと僕は祈りました
人の業の連鎖によって祈りは続けられ.人々は痛みを委ねあって許しあって満たされいきます。
欠けたピースを、無価値のペイン(痛み・あるいは枠組み)を、冀望また愛さえも祈り、痛みを託し合って生まれ替わるイニシエイション(組織の一員となるための儀式)をするのです。
ペインはカタカナで書かれているため、pain(痛み)なのかpane(枠組み)なのかはわかりません。冀望は希望と同じ意味です。
ドッペルゲンガーは主人公に、自分が主人公の代わりに主人公として生きることを告げ、主人公はドッペルゲンガーがやったのと同じように誰かの器を奪えと言っています。
主人公は奇跡をくれと乞い願います。この奇跡が簡単に別の器が手に入ることなのか、元の器を取り戻すことなのかはわかりませんが、おそらく後者でしょう。自分という存在でいられる幸せを主人公は自覚したのです。
拝啓ドッペルゲンガー 君は 君は誰?
嗚呼混濁と交差して 僕は誰?
もう止まらない戻れない
どうもこんにちは 君の
解釈拝啓ドッペルゲンガーへ
君は 君は誰ですか?
嗚呼 混濁と交差して僕は誰かわからなくなってしまった
もう僕は止まらないし戻れない
どうもこんにちは 君の
主人公はドッペルゲンガーに君は誰と問い、思考が混濁して交わって、僕は誰と問います。
僕はもう後に戻れない、主人公は主人公の器の中に戻れなくなりました。そして、主人公は曲冒頭とは反対にドッペルゲンガーへとなったのです。
拝啓ドッペルゲンガー それはそれは僕
蝕まれた存在に世界が気付こうが
もう鳴り止まない 醒め止まない 奇跡の輪廻が
狂った正解を染め上げるさ
上手くやれよ ルンパッパ
解釈拝啓ドッペルゲンガーへ
それは、それは僕なんだ
蝕まれた存在にたとえ世界が気付いたとしても
もう鳴り止まない、醒め止まない
奇跡の輪廻が狂った正解を染め上げるさ
君も上手くやれよ ルンパッパ
ドッペルゲンガーは主人公は僕なんだと宣言します。そして、主人公が蝕まれドッペルゲンガーに乗っ取られたことを世界が気づいたとしても、もう器を返さないと告げています。そして、主人公に「君もうまくやって器を見つけろよ」と言っています。
「どうもこんにちは 君の分身です」
解釈「どうもこんにちは 僕は君の分身です」
このセリフは冒頭と同じものです。また別の人間を対象にドッペルゲンガーになった主人公が現れ、器を乗っ取っていくのでしょう。こうしてドッペルゲンガー反応は連鎖していきます。
何度も出てくる歌詞「奇跡の輪廻が狂った世界を染め上げて」はこの連鎖により自分の器にいる人間がいなくなることも示しているのではないかと思います。
『拝啓ドッペルゲンガー』は歌詞を解釈していくとなかなかホラーな物語になりますね。自分が自分でいることの幸せを教えてくれる曲になっているでしょう。