【King Gnu/Prayer X】の歌詞の意味を徹底解釈 | 『自由な音楽がしたい気持ち』を表現した曲名に隠されている常田さんの想いとは
編集: ひいらぎ最終更新: 2020/9/19
Prayer Xという曲名の意味を考察
『Prayer』には、『祈り』という意味があります。『祈る者』と訳す場合もありますが、一般的には『祈り』と訳すことが多いようです。一見すると、『player(演奏者)』と見間違えそうになりますが、ここでは『Prayer(祈り)』が主題なのですね。
『X』は、未知であるものに対して使われる記号です。例えば、『謎の飛行物体X』などと言う時に用いられます。
この題名の謎を解くために、ミュージックビデオを参考にして考えてみたいと思います。
ミュージックビデオの登場人物
①金髪のピアニスト
顔が歪んで表情が安定しません。周囲への期待に応えようとするうちに、徐々に自分の作りたい音楽が分からなくなってきています。
②黒い人間たち
ピアニストを雇っている音楽関係の権力者たち。お金のことばかりしか頭になく、ピアニストのことも稼ぎの為に利用しています。
③耳のない信者たち
同じ顔をして長い列を作り、崇拝の儀式をしている信者たち。
ピアニストの信者であるようですが、音楽を聴くための耳がなく、口だけが大きく描かれています。
深く聴こうとせずに口では分かったようなことを言う人々を表しているのでしょうか。
ミュージックビデオから想像されるストーリーの大まかな流れ
①ピアニストが空から落下してくるシーン
これまで売れなかった音楽が売れ始めた時、ピアニストは自分の音楽が評価されてうれしかったけれど、その喜びは一時的なものでした。
②黒い人間たちに指示されながら作曲するシーン
ピアニストは自分の好きな音楽よりも万人受けする曲を作っていくうちに、本当に自分が作りたい曲が何なのか分からなくなってしまったのです。
③ピアニストが向かう先とは逆方向に向かって崇拝する信者たちのシーン
一度有名になると、楽曲自体の純粋な価値には気づいてもらいにくくなるということが生じてきます。残酷なのは、自分のファンである人たちほど、『あなたが作った作品なのだからいいものに決まっている』などと言って『深く聴く心を放棄する(耳がない)』ことが有り得る事です。
④信者に刺され、自ら死を選ぶピアニストのシーン
ピアニストの苦しみを密かに感じ取っていたファンが勇気を振り絞って列を乱し、『もう、あなたの苦しみを見るのに耐えられないよ』とピアニストを刺します。ここでの『刺す』行為は、アーティストを苦しみから解放することを表現していると考えられます。
自分の心を察してくれていた一人のファンのおかげで涙を流せた(血飛沫を上げる事ができた)主人公は、表舞台から姿を消す(自ら死ぬ)ことを覚悟し、自由の身になることが出来たのでした。
曲名の意味をミュージックビデオから考察すると?
この楽曲における『pray(祈り)』は、一体誰からの視点のものなのでしょう。『X』と曖昧な表現にしてしまうのは、アーティストが、『自分の本当の気持ちを察してくれているかもしれないファンがどこかにいたらな』と願う気持ちなのでしょうか。
それとも、『自由に音楽を作ってほしい』と願うファンの気持ちなのでしょうか。
解釈に迷いますが今回は、アーティストの視点から考え、『自由な音楽がしたい気持ち』を、『どこかの誰か(X)』に気づいてもらいたいというメッセージが込められ、『pray X』という題名になっていると解釈します。
Prayer Xの歌詞の意味を徹底解釈
1番
溢れ出した涙のように
一時の煌めく命ならば
出会いと別れを
繰り返す日々の中で
一体全体何を信じればいい?
どうしようもなく感情が溢れ出てしまうほどに
一時しか輝くことが出来ない儚い音楽人生ならば
これから先、自分の音楽を広めていく中で
誰のどんな意見を信じて進んでいけばいい?
歌詞では『溢れ出した涙』のような『一時の煌めく命』と表現されています。
涙は感情によって無意識に流れ出てしまう水分です。
有名なことわざ『覆水盆に返らず(ふくすいぼんにかえらず)』が、『一度起きたことは二度と戻ることはない』という意味を指すように、
『例え音楽界で売れてもずっといい状況が続くわけではないこと』をここでは表現していると捉えます。
自分のファンになってくれた人が明日には飽きてどこかに行ってしまうかもしれない恐れを抱きながら、『一体全体何を信じればいい?』と迷いを感じています。
生まれ落ちた
その時には
泣き喚いていた
奪われないように
くたばらないように
生きるのが精一杯だ
音楽界でメジャーデビューを果たした時を思い出す
その時には、自分の気持ちを分かってもらえたような気がした
このチャンスを失わないように
ずっと今のいい状態が続くようにと
ただ続けることに必死になっていたよ
『生まれ落ちる』は『音楽界でメジャーになったこと』と解釈します。
そして、『泣き喚く』は、『感情を外側に出す』という肯定的な意味として捉えます。
売れなかった自分の音楽が評価され始めて喜んだピアニストは、ずっと今の良い状態が続くことを願いながら奮闘します。
胸に刺さったナイフを
抜けずにいるの。
抜いたその瞬間
飛沫を上げて
涙が噴き出すでしょう?
言葉に出来ない心の痛みを
どうすることもできずにいるの
その痛みに向き合うことは怖い
一度溢れ出したら
もう止められないかもしれないから
自分の作る曲が売れていく日々を送っていた主人公でしたが、世間の目を気にしすぎて本当の気持ちを表現することが難しくなってきています。
胸にナイフが刺さるような心の痛みを抱えていますが、『抜けずにいるの。』と話します。
抜こうと思えば抜けるのかもしれないけれど、感情が止まらなくなってコントロールできなくなることに恐れを抱いています。
溢れ出した涙のように
一時の煌めく命ならば
出会いと別れを
繰り返す日々の中で
一体全体何を信じればいい?
一度解釈したので割愛します
2番
屈託のない笑顔の裏、
隠していた
生きるための嘘が
最早本当か嘘か
わからなくて
無邪気に笑って見せていたけれど
実際のところ、表現したいことは出せずにいたんだ
万人受けをするために作ってきた、
僕の本当の気持ちを表さない楽曲を作るうちに
僕自身でさえも向かう先に迷い始めているんだ
世間の人々やファンに気に入ってもらうために笑顔を繕ってきた主人公。
ここでの『生きるため』は、『音楽業界で評価され続けるため』と解釈し、そのために自分を追い詰めていくうちに向かう先に迷いが生じてきているようです。
自分の居場所でさえも
見失っているの
怒りに飲まれて
光に憧れて
今日も空を眺めるのでしょう
自分の心の拠り所でさえ
今となってはもう分からないんだ
世間では叩かれたりしてさ
それでも夢をまだ諦めきれずに
こうして明日を生きるしかないんだよ
世間に評価されることを狙って書いた曲でも、批判的な意見を浴びせられることがあるので安心することはできないと主人公は話しています。
それでも、『光に憧れ』と表現するように、好きな音楽で活躍していくことへの憧れを捨てきれないので続けていくしかないと言っているのです。
この人生に
意味があるのなら
教えてよ
脆く、儚い日々の中で
僕の作る音楽を
本当に必要としてくれる人たちがいるのならば
その意味を教えてもらいたいよ
流行っては消えていくような
音楽業界を生きる日々の中で
これは、自分の曲を必要としてくれるファンに対して問いかけていると解釈します。
『脆く、儚い日々』は、昨日までファンだった人がもう飽きてどこかに行ってしまうような不安定さを思わせます。
痛みや悲しみさえも
飲み干した今、僕らは
一体全体何を信じればいい?
(本来ならば味わわなくていいはずの、
本当の思いが伝わらないことに対する)
心の痛みや悲しみを多く感じてきた僕たちは
これから先、何を信じて生きていけばいいのだろう
『痛みや悲しみ』のあとに『さえ』という言葉が添えられています。
痛みや悲しみを味わうこと自体辛いのに、それを全て飲み干すほどに自分の中に多く取り込んでしまったという意味として捉えます。
ここでの『僕ら』は、本心を察してくれているかもしれないファンを含むから複数形になっているのでしょうか。
溢れ出した涙のように
一時の煌めく命ならば
出会いと別れを
繰り返す日々の中で
一体全体何を信じればいい?
一度解釈したので割愛します